AIシステム開発会社のアノテテです。AIエージェントやAI-OCR、業務管理システムの開発、Claude Codeを活用した業務改善支援などを行っています。
AI-OCRは企業の業務効率化やDX化に活用されるツールですが、一方で「導入したけれど使えなかった」という声を聞くことがあります。この記事では、AI-OCRが使えないと言われる理由を6つに整理し、自社の帳票や運用に合った製品を選ぶためのポイントと対処方法を解説します。
この記事でわかること:
・AI-OCRが使えないと言われる6つの理由と対処法
・導入前に試しておきたいこと
・個別開発を検討するケース
AI-OCRとは
AI-OCRは、書類の画像から文字を読み取り、データに変換する技術です。まずは基本的な仕組みと種類を整理します。
従来のOCRとの違い
従来のOCRとAI-OCRにはいくつか違いがありますが、大きな違いのひとつが「読み取る場所を人が指定するかどうか」です。
OCR(Optical Character Recognition/光学文字認識)は、画像やPDFの文字をテキストデータに変換する技術です。従来のOCRで帳票から特定の項目を取り出す場合、「右上の数字を日付として読む」といったテンプレートをフォーマットごとに作るのが一般的でした。決まったフォーマットなら安定して処理できますが、フォーマットが増えるたびにテンプレートの追加が必要です。
AI-OCRは、OCRに機械学習を組み合わせたものです。ただし、「AI-OCRなら設定不要」というわけではありません。
製品によっては定型帳票向けと非定型帳票向けで読み取りタイプが分かれており、定型帳票向けでは読み取り枠の設定が必要です。
非定型帳票向けのタイプでは、項目名や周辺の文脈、レイアウトから「どの数字が金額か」「どの日付が取引日か」を判断し、帳票ごとの位置設定なしで読み取ることが可能です。
| 従来のOCR | AI-OCR (定型帳票向け) | AI-OCR (非定型帳票向け) | |
| 読み取り方法 | フォーマットごとにテンプレートを作る | 取り枠を設定する | 項目の位置を自動で判断する |
| 対応できる帳票 | レイアウトが固定された書類 | レイアウトが固定された書類 | レイアウトが異なる書類 |
| 事前設定の手間 | フォーマットごとに必要 | フォーマットごとに必要 | 帳票ごとの位置設定は不要 |
定型帳票と非定型帳票の具体的な違い
定型帳票は、フォーマットが決まっている書類です。自社でフォーマットを定めた申込書や社内報告書などが該当します。項目の位置が固定されているため、比較的安定して読み取れます。
一方で、非定型帳票は発行元によってフォーマットが異なる書類です。取引先から届く請求書や領収書、店舗ごとにフォーマットが違うレシート、金融機関ごとに形式が異なる通帳などが該当します。
例えば同じ請求書でも「A社は金額を右下、B社は表の中に記載する」といったものです。
| 定型帳票 | 非定型帳票 | |
| フォーマット | 決まっている | 発行元ごとに異なる |
| 読み取りの難しさ | 比較的安定する | 判断の精度が求められる |
| 代表的な書類 | 自社のフォーマットの申込書・報告書 | 他社発行の請求書・領収書・レシート |
AI-OCRを導入しても思うような精度が出ない場合、この非定型帳票への対応が原因になっていることがあります。
AI-OCRが使えないと言われる6つの理由と対処法

AI-OCRを「導入したものの使えなかった」と言われる理由を6つに整理しました。
理由ごとに製品側の対処法もあわせて紹介します。
1.取引先ごとにフォーマットが違い精度が安定しない
取引先ごとに項目の位置が異なる書類は、固定位置を指定する従来の読み取り方式では対応が困難です。フォーマットごとにテンプレートを作成する方法もありますが、取引先が増えるほど管理の手間も増えてしまいます。
AIが項目名や文脈から自動判断するタイプは、事前の位置設定が不要な反面、書類によって読み取り精度にばらつきが出ることがあります。
特に読み取りが難しいのは、銀行の通帳や店舗ごとに表記が違うレシートなど、一般的な請求書とはレイアウトが大きく異なる書類です。「請求書に対応」と謳われている製品であっても、扱う書類のフォーマットが大きく違えば、期待通りの精度が出るとは限りません。
対処法
- 「非定型帳票」に対応したシステムを選ぶ
自社の扱う書類が、システム上でどのタイプとして処理されるかを事前に確認することが重要です。 - 運用方法を工夫する
精度が足りない場合は、「結果を人の手で修正しながらAIの精度を高める」「別の読み取りタイプに切り替える」といった運用面でのカバーも検討します。
2. 印字が薄い帳票やスキャン状態が悪い帳票は読み取れない
印字が薄れていたり、スキャン時に傾いていたりすると、AIが文字を正しく判別できません。特に、時間とともに印字が薄くなる感熱紙のレシートや、折り目のある書類などは読み取りにくくなります。
これは製品性能だけでなく、原本の品質による問題です。傾き補正やノイズ除去などで改善できる場合もありますが、製品を変えるだけで解決するとは限りません。
対処法
- 事前の画像補正で改善する
読み取り前の画像補正によって改善できることがあります。傾きの補正、薄い文字を見やすくする処理、ノイズ除去などの機能を備えた製品を活用します。 - 人が確認・入力する運用に切り替える
元の書類の状態が悪すぎて補正機能を使っても読み取れない場合は、無理に自動化せず、人が確認・入力する運用に切り替えます。
3. 読み取った後の確認と修正が残る
AI-OCRでも画像や文字を100%正しく認識できるわけではないため、確認や例外処理は必要になります。
「自動化するために導入したのに、人の作業が残った」と感じやすいポイントですが、単なる確認だけで済むのか、1枚ずつ開いて修正するのかで現場の負担は大きく違います。 「人の作業が残るかどうか」ではなく、「どこまで減らせるか」という視点で見ることが重要です。
対処法
- 「確信度」スコアを活用して全件確認を省く
読み取り結果に「確信度(AIの自信度)」スコアを付け、スコアが低い項目だけを人が確認する運用にすれば、全件確認の手間をなくすことができます。 - 確認・修正がしやすい製品を選ぶ
確認の基準を自社で設定できる製品や、読み取り間違いを画面上で簡単に修正できる製品を選ぶのがポイントです。
4. 新しい画面や操作を覚えるのが負担になる
新しい画面や操作を覚えるのは、実際に書類を扱う現場の担当者です。
経理部門だけで使うのであれば対象者は限られますが、営業事務や発注担当など複数の部門から書類を上げる場合、教育の対象が大きく広がります。 特に、月に数枚しか書類を処理しない人にとっては、「たまにしか使わないシステムの操作を覚える」こと自体が負担になる場合があります。
対処法
- 外部のクラウドストレージと連携できる製品を選ぶ
Googleドライブなどの専用フォルダに置くだけで自動的に取り込める製品であれば、書類を上げる現場の作業手順は変わりません。 - あらかじめ確認・修正の担当者を決めておく
取り込みは簡単になっても、読み取り結果の確認や修正は製品側の画面で行うことになります。「誰がその作業を担当するのか」はあらかじめルールを決めておく必要があります。
5. 保存先が変わり全社の運用を作り直すことになる
会計ソフトに組み込まれたタイプや書類保管型のAI-OCRでは、読み取ったデータや書類を製品側のシステムに保存するものがあります。その場合、これまで使っていたクラウドストレージから書類の置き場所が変わってしまいます。
変わるのは保存場所だけではありません。フォルダ構成や閲覧権限、書類を探す導線なども、新しい環境に合わせて見直す必要があります。既存のストレージをほかの業務でも利用している場合は、影響がさらに全社へ広がることになります。
対処法
- 保存先を維持できるタイプを選ぶ
読み取り機能だけを提供するタイプの製品であれば、既存の保存先を維持しやすくなります。 - 「クラウドストレージ連携」の仕様を確認する
連携機能が「取り込みの入口」だけに対応している場合もあるため要注意です。読み取った後の保存や検索まで、既存の環境のまま完結できるかは分けて確認する必要があります。
6. 社外にデータを預けることに不安がある
取引先名や取引金額といった機密情報が記載された書類を、外部サービスに送ることへの懸念もあります。
一般的なクラウド型のAI-OCRでは、書類の画像を一度外部のサーバーに送って処理を行います。そのため、情報管理に厳しい基準を設けている企業では、このセキュリティ面が導入の大きなハードルになることがあります。
対処法
- データを社外に出さない構成を選ぶ
クラウド型ではなく、自社内にシステムを構築する「オンプレミス版」や、「閉域網対応版」を提供している製品を選ぶことも可能です。 - データの取り扱い範囲を事前に確認する
データがどこを通り、どこに保存され、AIの学習に利用されるのか。この3点を自社の情報管理基準に照らし合わせて確認することが重要です。
個別開発を検討することになるケース
製品側にもさまざまな対処手段がありますが、自社の条件をすべて満たす製品が見つからないこともあります。例えば、以下のような3つのケースです。
1.保存先と業務手順と連携先を同時に満たせない
条件が1つなら対応製品を見つけやすいですが、複数重なると難しくなります。
たとえば「保存先は変えたくない」「現場の手順も変えたくない」「読み取り結果は既存システムに入れたい」という3つの条件です。
それぞれに対応する製品はあっても、すべてを標準機能だけで満たせるとは限りません。
2.既製のタイプでは自社の帳票が読めない
複数の製品や読み取りタイプ、前処理などを試しても必要な項目を安定して読めない場合は、読み取り部分から設計する個別開発も選択肢になります。
特に、一般的な請求書や領収書とは大きく異なる特殊な帳票では、非定型帳票に対応したタイプでも精度が届かないことがあります。
自社の帳票に合わせて読み取る項目やルールを設計することで、こうした書類にも対応しやすくなります。
3.標準機能の組み合わせでは要件が埋まらない
読み取り結果の受け渡しは、まず標準機能で対応できるかを確認します。
CSVで既存システムに取り込めるなら、開発は必要ありません。RPAやデータ連携ツールで、フォルダ監視から結果の保存まで組める場合もあります。
一方、既存ストレージのファイルに属性情報を書き戻したり、社内システムのデータベースへ直接登録したりする場合は、標準機能では対応できず開発が必要になることがあります。
まず実際の帳票で読み取りを試し、標準機能でどこまで実現できるかを確認する。そのうえで、足りない部分だけ個別開発を検討するのが現実的です。
AI-OCRを個別開発した事例

ここでは既製品では条件が合わず、個別開発でAI-OCRを導入した事例をご紹介します。自社の課題がパッケージ商品で解決できないと感じる企業さまのご参考にしてください。
課題1:保存先も現場の作業手順も変えられなかった
株式会社ブンカ様では、書類の保存先と現場の作業手順のどちらも変えられないという条件がありました。
全社基盤としてGoogleドライブを使っており、同時期に生成AIを全社活用するプロジェクトも進行していました。保存したデータを生成AIでも活用する予定だったため、書類を別サービスへ移すことができませんでした。
さらに、書類をアップロードするのは経理だけではなく、各部署の担当者や取りまとめ役です。手順を変えると全社への教育が必要になり、定着しない懸念もありました。
他社サービス3社を比較したものの、月額コスト、作業工数、Googleドライブとの連携という3つの条件を満たすものは見つからなかったといいます。
課題2:月末月初に部門をまたいで作業が集中していた
作業量も大きな負担でした。
電子帳簿保存法への対応をきっかけに、請求書や見積書をGoogleドライブへ保存していましたが、ファイル名や検索用ラベルは1件ずつ手入力していました。
扱う電子ファイルは月約1,000件。複数人で分担しても、毎月合計約30時間がこの作業に使われていました。
しかも提出が月末月初に集中するため、営業事務やデザイン発注、印刷手配などを担当する部門に負荷が偏ります。手作業のため入力ミスやラベルの付け間違いも発生していました。
課題3:月1〜2枚でも入力が億劫だった
数字には表れにくい負担もありました。
システムサービス課の濱田様は、月1〜2枚でも入力作業そのものが億劫だったと振り返っています。担当者によっては月50〜60枚を処理するケースもあり、負担はさらに大きくなります。
直接利益を生む作業ではないのに、やらなければならないタスクとして残り続ける。こうした心理的な負担も、導入を考える大きな理由になっていました。
個別開発により得られた効果
これらの課題に対し、弊社株式会社アノテテでは、Googleドライブの環境と業務フローを変えずに、アップロードされた書類へ自動でラベルを付与する仕組みを構築しました。
今回の個別開発で得られたおもな効果としては、以下の3点が挙げられます。
- 作業工数の劇的な削減: 人の作業は「自動入力された内容の確認」のみとなり、手入力の工数が体感で10分の1に削減されました。
- 品質の向上: 入力ミスが減少し、品質・速度・精度のすべてが向上したと評価をいただいています。
- コア業務へのリソース投下: 作業時間を削減できたことで、全社で推進する「生成AI活用プロジェクト」など、本来取り組むべき業務に時間を回せるようになったことが大きな成果です。
※詳しい導入の経緯は、株式会社ブンカ様のインタビュー記事にてご紹介しています。
AI-OCRを自社仕様で開発するならBoost Dev
株式会社アノテテでは、自社業務の自動化を実現するClaude Codeの導入支援をはじめ、完成イメージを確認しながら自社システムを開発できる「BoostDev」、AI顧問サービスなど、企業のAI活用を幅広くサポートしています。
AI-OCRについても、「パッケージ製品を試したものの、うまく活用できなかった」「自社の業務に合わせたAI-OCRを開発したい」といった企業様の課題をヒアリングし、それぞれの業務やニーズに合った最適なAI-OCRの導入・活用をサポートします。ぜひお気軽にお問合せください。

